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ジャン=ギアン・ケラス&アレクサンドル・タロー 王子ホール イケメン・デュオの晩

Img_4126_1 当代きってのイケメン・デュオ、ジャン=ギアン・ケラスとアレクサンドル・タローの演奏。2008年11月21日(金)王子ホールにて。

ケラスは友人から借りたCDで知った。(そのCDについては、こちらをご覧あれ: http://peacelove.cocolog-nifty.com/blog/2007/11/cd2_65ea.html )

なんとまあ上手なチェロ。若々しく伸びやかな音である。一度本物をと思っていたが、切符の入手はなかなか困難。友人のおかげで切符が取れた。

アレクサンドル・タローは、噂は聞いていたが、聴くのは初めて。

以下が演目である。

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シューベルト:ソナチネ 第1番 ニ長調 D384
        :アルペジヨーネ・ソナタ イ短調 D821

********** 休憩 **********

ベルク:4つの小品 Op.5
ブラームス:チェロ・ソナタ 第1番 ホ短調 Op.38

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何しろイケメン・デュオなので、女性客が多い。それも年代問わず。

結果、化粧室入口からロビー中央まで伸びる、なが~い列。

このホールは、是非1階にも、同様の設備を整えてほしい。無理がある。

待つ間の会話で、この方々が「ケラス様」と、崇めていることを知った。すごいなぁ。

ともあれ、演奏が始まった。

ケラスの腕前はすごい。本当にうまかった。これ以外の言葉がうかばないほどに。

シューベルトのソナチネは、ヴァイオリンのために作られた曲。またソナタはアルペジョーネという、今では廃れた楽器のために作曲されたもの。アルペジョーネはギターとヴィオラ・ダ・ガンバのあいのこのような楽器で、4弦のチェロより高音に2弦あり、合計6弦の楽器だったそうだ。

わざわざ他の楽器のために書かれた曲を選んだのは、何故か。チェロの可能性を追求したのか?チェロでは難しいとされる高音域の演奏で、自身の妙技をひけらかすためか?

いや、そんないやらしさは微塵もない。美しく、清らかで、やや硬質の、しかし艶のある、滑らかな音色だ。

この選曲は、たぶんシューベルトが好きだから。チェロ+ピアノの曲を書かなかったので、仕方がないのだ。

ケラスは、難しい高音域を、いともたやすく、軽やかに奏でた。

また、ボーイングの美しいこと、特筆したい。特に小さな音の時の安定性。

タローとの掛け合いは、まことに見事。ピアノは伴奏のはずだが、タローの演奏は伴奏ではない。

二人は、お互いに絡み合い、交互に相手を引き立たせるように奏でる。どちらが伴奏と定義できなかった。「デュオ」として、お互いを認め合い、この曲を「デュオ」の曲として、演奏しようとしている。

自分が主となる時の演奏は、もちろん見事極まりない。しかし、従になって弾いている時が、さらに素晴らしかった。相手の音に全身を集中させ、どうすればバートナーを引き立たせることができるか、その1点だけに留意した、十分にして過分のない演奏。

アルペジョーネ・ソナタは、5月と10月に今井信子の演奏を聴いた。伴奏者はそれぞれフランソワ・キリアンと伊藤恵。(それぞれの演奏を聴いたときの感想はこちら:  http://peacelove.cocolog-nifty.com/blog/2008/05/post_82ba.html http://peacelove.cocolog-nifty.com/blog/2008/11/post-57a0.html )

その演奏と比較すると、ケラス+タローが「デュオ」を意識して演奏しているのが分かる。

今井の演奏は、どちらも、「ヴィオラ+伴奏のピアノ」であった。あくまでもピアノが伴奏。

キリアンとのやり取りも、緊張感あふれる演奏で大好きだが、“伴奏のピアノ”という立場は、ギリギリの線で崩していない。

ピアノ伴奏付きの曲の場合、すべて、ケラス+タローのような演奏の可能性があるのではないか。このような演奏の方が、現代的と言えるかもしれない。しかし、めったにこんなパートナーには巡り合えないだろう。

ケラスは、リフレインの時修飾音をつけたり、自分の色を出そうとしていた。今井の方が作曲家に添うように、演奏していたと思う。

楽器の違いを言えば、ヴィオラで弾た方がややしまった音。楽器が小ぶりなので当然か。

名曲を名演奏家が弾く。どれが一番とはいえない。違う味わいなのだ。今井もケラスも好きだ。

後半の曲、十二音楽派ベルクの「四つの小品」も見事な演奏で、その後休まず、続けてブラームスのチェロ・ソナタ第一番(ホ短調)を弾いた。

同行の友人は、「ブラームスと新ウィーン学派の近さを、はっきり示してくれた。ブラームスは保守派と言われているが、実は斬新なのだ。」と、絶賛していた。

残念ながら、私のブラームスに対する理解は今ひとつ。そこまで分からなかった。ベルクの方が、新鮮で楽しく聴けた。

どの曲も、終了してなお、演者の集中は途切れず、二人が深い瞑想からさめるまで、観客は拍手ができない。ケラス+タローの魔法が、ホール全体を支配したのだ。

アンコールは、シューベルト: 夜と夢 Op.43-2、ウェーベルン: 3つの小品、クライスラー: 愛の悲しみ

サービス精神旺盛に、3曲、ご機嫌な演奏だった。

★ ケラス・タローのCD、「シューベルト:アルペッジョーネ・ソナタ」、輸入販売元:(株)キングインターナショナル[KKCC-532(HMC9019)] を聴くと、この晩のような「デュオ」感覚より、「チェロ+伴奏のピアノ」のイメージが強い。一夜限りだったのか、それともこの録音が2006年1月なので、その後演奏が変化しているのか、興味深い。

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