書籍・雑誌

青柳いづみこ 「ピアニストは指先で考える」

41hbf02bibcl_ss500_1_1 クラシック好きの友人から借りた1冊。

青柳いづみこさんは、名前を知っている程度。演奏を聴いたこともない。著書を読むのも、これが初めて。

友人は、私が中年になってからピアノを始めたことを知っているので、奏法上の参考になればと、貸してくれたのだ。

私のレベルは、奏法どころか、ミスタッチなく、指定の速度で引けるかが課題。ちょっと上級すぎる。

とはいえ、上手な人はこういうことを考えるのだ。大変参考になった。

まず「ピアニストの身体」という章。

「曲げた指、のばした指」と題して、指を伸ばして弾く奏法と、曲げた指で弾く奏法の違い、が書かれている。理想的には、作曲家に応じて、どちらかの奏法を選ぶべきと。

私は、どちらの奏法ともいえない。手の大きさに限りがあるので、ゆとりがあれば曲げて。ゆとりがなくなれば、のばした指で弾かざるを得ない。いや、そんなこと考えてもみなかった。

「ショパンはのばした指で弾くべき」と書いてあるが、理屈抜きに、のばした指でなければ弾けないと思う。これは実感。

しかし曲げた指で覚えた人は、ショパンすらも「曲げた指で弾こうとする」そう。えー、どうやって?!

私のような下手は、まず、5線符を数えながら、いまだ不自由な10指を、黒鍵と白鍵の間に絡ませ、ようやく弾くべき和音を確認する。次にどうやったら、このまますべての鍵盤を押し込むことができるか、いや、ほんとは押し込んじゃいけない…。

ショパンの譜読みは、結構大変。私のレベルでは。

格闘の末、音と場所で何とか和音を覚える。同時にその和音は、楽譜のどこに書いてあるか。これも場所で覚える。だから、同じ曲でも、楽譜が違うと、印刷の違いから、場所が違うので、弾くのに苦労する。

しかし青柳さんのようなプロの人でも、手の小さい悩みがあるとは。彼女は手が小さいので、手のストレッチを怠らないそうだ。

私の手は、そんなに小さくないのだが、幅がないので、親指と小指より、親指と薬指、もしくは中指を使った方が、遠くまで伸びる。オクターブ以上はこれを利用せよとは、我が師の教え。

また「こんにゃく体操」には驚いた。青柳さんの習ったころの芸大では、そう呼ばれる柔軟体操が必修科目だったそうだ。骨盤の位置を正したり、部分的脱力を練習するのだと。

なるほど脱力ができなければ、楽器は弾けない。素人は大きな音を出そうと、力が入るので、結局小さな、響かぬ音になってしまう。

関節を柔らかくして、腕全体を鞭のようにしならせることにより、部分の力でなく、体芯の力を抹消に伝えることができる。

ピアノはスポーツと同じだと思う。

このほか椅子の高さや硬さなどが、演奏に影響を与えるとか、薄々感じていたことを、論理的に例をあげて書いている。

ふむふむ、と納得のいくことが多い。

しかし全体を通して読むと、やはり技術的なことは、私には高度で、すぐには役に立たない。

ともかく今取り組んでいる「悲愴」を、悲壮感なく弾けるようになりたいものである。

ちなみに第2楽章だけで11か月かかった。第3楽章はテンからあきらめているが、第1楽章は、生きているうちに弾けるようになるだろうか。

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今井信子 「憧れ」 ヴィオラとともに

Img_1559 昨年読んだ本の中で、”No.1”をつけてもいい。ヴィオラ奏者、今井信子の「憧れ」だ。

「もっと多くの人に、ヴィオラの魅力を知って欲しい。」その思いから出版を企画、紆余曲折を経て、5年越しでこの本ができたそうだ。

確かに、オーケストラや室内楽では、ヴィオラはあくまでもバイプレイヤーだ。しかしこの本に付いてきたCD(ヘンデル作曲「私を泣かせてください」)を聞くと、バイオリンでもなく、チェロでもない、ヴィオラでしかできない表現のあることが分る。

大人の、アルトの声なのだ。

静かに歌いだし、心に取り付き、揺する。

この本の序章、「シオンの奇跡」では、音楽家はどのように音楽と向かい合わなければいけないか、そしてそれを若い人々に伝えたい、と彼女は書きだす。そして…、みんなの心が一つになり、未熟な若い音楽家たちが、たった一回、奇跡の音を奏でることができた。

そのことが、“毎日が音楽でいっぱいだった”桐朋時代を思い出させ、音楽に恋して過ごした日々、どのようにヴィオラと出会ったか、留学生活、演奏家としての自己確立、ヴィオラが弾けなくなった時、次世代へ伝えたいこと、と書きすすめていく。

構成も見事だ。説得力のある文章で、最後まで読者の興味を惹きつける。もちろん編集者の力も大きいのだろう。しかしこの本の魅力は、著者の音楽に対する真っすぐな心と、極めても極めてもまだ満足しない探究心だ。それが直截に伝わってくる。

“人がまだ踏んだことのない雪道を行きたい。”

“ノー・リスク、ノー・グローリー(リスクのないところには栄光はない。)”

彼女の言葉は、腰の重い私を叱咤する。

さあ、今年もガンバルゾ!

上記「シオンの奇跡」を記録したのが、EPSONの「祈り」というCDに入っている。その曲以外に、書籍のおまけCDと同じ「私を泣かせてください」、武満徹の「ア・ストリング・アラウンド・オータム」他。こちらも損のない買い物だと思う。

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